たまには校長室だよりを配布しようと、印刷機に向かいました。
けれども、戸棚に入っているはずの印刷紙が、ちょうどなくなっていたのです。
そこで、A4版500枚入りの包みが5束詰まった段ボールを、倉庫から運んだのです。
持ち上げる時に思わず発した掛け声が、「よっこい、しょういちっ。」
たまたまそばにいた女子教員が不思議そうな顔をして、「何ですか、それ?」
「えっ、横井庄一さんを知らないの。『恥ずかしながら帰って参りました。』が流行語になったんだ。」
「???。」
無理もありません。
横井さんが残留日本兵としてグアム島で発見された昭和47《1972》年に、この職員はまだ1歳だったのですから。
「横井さんはね、28年間も……、」
私の延々と続く昭和物語を聞かされてはたまらないと思ったのでしょう、彼女はそそくさと出ていきました。
平成の時代が、もうじき幕を閉じようとしています。
でも私の心には、まだ昭和が生き生きと躍動しているのです。